100冊の本に挑戦 高田明和 「念ずれば夢かなう」
5月の連休の時、図書館で中も見ずに何気なく借りてきた本であるが、実に興味深い内容であった。
著者はどこぞの偉いお坊さんであろうと思っていたら、なんと仏教とはとんと縁のない慶応大学医学部出の医学博士であり、清水の次郎長の直系の孫でもある。
内容を要約すると、お経を唱えることの意味やお経の不思議な力について、読経・瞑想の脳科学的な話が述べられている。
お経の中でも有名な「観音経」と「延命十句観音経」が主役であるが、単にお経が素晴らしいとか、唱えるとご利益があるなどという単純な話ではない。
お経を唱えることによって起こる脳内の新しい動き、働きが普段出していない脳波を生み出し、それがその人に与える不思議な力・影響力をいろいろな例をとって解説してある。
特に、うつ病やひきこもりの子供などに素晴らしい効果があることや、またやる気の無い生活している人々にどうしたらやる気が出てくるか、気持ちを高めることが出来るかなど興味深い事例がいっぱい書いてあり、注目したい。
脳梗塞で口のきけない人がどうして話せるようになるのか?という問題に、リハビリで「医師や理学療法士はアドバイスや手助けをするだけで、このように脳を変え、病気から回復させることができるのは自分だけなのだと理解することが、病気を予防し、また病気を治すのに最も重要なこと」と言われる。
この脳梗塞や心筋梗塞がストレスから来ることはよく知られているが、これら生活習慣病から身を守るには、精神の安定が第一で、そこにお経をとりいれると素晴らしい効果があるというのだ。
100冊の本に挑戦 土門拳 「古寺を訪ねて 1・斑鳩から奈良へ 2・奈良西の京から室生へ」
土門拳さんは私の大好きな写真家である。
独特のアップで被写体に迫り見る人に力強い感動を与えてくれる。この古寺を訪ねてシリーズは4巻まである写真集であり今回はそのうちの最初の2巻である。
作者は写真家であるが、写真とともに彼の文章もとても面白い。
法隆寺の項では、梅原猛氏の「隠された十字架 法隆寺論」でその不可解さを「死霊を封じ込めるため」と論じられたことに対し疑問を呈し、梅原氏とはまた違った角度で述べている。すなわち「ぼくはその意見を鵜呑みにはできない。今、ぼくはそれよりも造形的なエンタシスの柱のたくましさに、魂を奪われざるをえない」と。
写真家としてその建築物の造形美を見事に写し論じている。
写真ももちろん素晴らしく、法隆寺の尾垂木を支える邪鬼や東大寺戒壇堂の広目天像の面相など面白くもあり鳥肌がたつ写真も多い。
唐招提寺金堂にある有名な千手観音立像の脇手のアップ画もうなってしまう。この写真も入江泰吉氏に同様な写真があるが、同じようでやはりそれぞれの感覚が違うのがどちらもすごい。
100冊の本に挑戦 田代尚嗣「仏教 108の謎」
この本は副題に 知っておきたい智慧としきたり とあるように、仏教について知っているようでわかってないいろいろなことが分り易く解説されている。
たとえば、「仏教では死後の世界は二つある?」「地獄はどこにあり、どんなところ?」「仏様は一体何人いるのか?」「お経を唱えると功徳はあるのか?」「日本の宗派は今いくつあるのか」「釈尊は食あたりで亡くなったのか」「お地蔵さまはなぜ子供の味方なのか」「浄土真宗は浄土宗とどこが違うのか」「仏像とはどういう意味の道具なのか」「薬師如来が持っている薬は何に効くのか」
といった疑問や、また現代の事柄から
「なぜお寺に墓地があって神社にはないのか」「僧侶が戒律を破ると罰則があるのか」「戒名はつけないといけないのか」「お賽銭にはどんな意味があるのだろう」「ご飯に箸を立てると不吉だというのはなぜか」「合掌にはどういう意味があるのか」「節分に豆をまくのはどんな意味があるのか」「お墓に水を掛けるのはなぜ」
など身近な疑問もいっぱい載っていて楽しく読めるのがいい。
100冊の本に挑戦 梅原猛「思うままに 神と怨霊」
梅原猛氏は京都大学出の哲学者であるが、それゆえに一般的にむつかしそうな近寄り難い感じが持たれているようだ。
私が梅原猛氏の本で最初に読んだのは「隠された十字架 法隆寺論」であった。この本はほんとにすごかった。
何がすごいというと、法隆寺や聖徳太子に対するとらえ方が今までの概念を180度ひっくり返すような斬新な観点から述べられていたことだ。それ以来私は大の梅原猛ファンになってしまった。
この「思うままに 神と怨霊」は現代日本に欠けたものは何かをJRの事故、国鉄民営化、プロ野球、イラク戦争、臓器提供等の実例や仏教、万葉集、作者自身のガンとの戦いなどあらゆるジャンルの事柄を通して氏の独特の話が載っており、ぐいぐい引き込まれていくエッセイ集になっている。
100冊の本に挑戦 赤川次郎「三毛猫ホームズの推理」
赤川次郎の三毛猫ホームズの推理を読んだ。
ユーモアミステリーというジャンルの代表的な作家であるが、それこそなかなかユーモアたっぷりで読んでいてどんどん進んでいく。
筋書きとしてはちょっと無理がるかなという部分も無きにしもあらずであるが、そこは深く考えずに軽く読み飛ばしていった。
中に出てくる三毛猫は作者が自分の家で15年間飼っていた猫がとうとう命を全うしたのを悲しんで登場させたらしいが、我が家にも16年以上生きている猫がいるのでとても親しみを感じた。
三毛猫ホームズシリーズは他にも出ているので、そのうちまた読みたいものだ。