100冊の本に挑戦 松本猛・菊池恩恵「失われた弥勒の手」

信州安曇野(アズミノ)で事故死した父の残した手がかりを元に、主人公である息子が安曇族の謎に挑戦しながら自分の家系の元を次第に明らかにしていく話になっている。

主人公とその友人と、旅先で知り合った韓国人の女性友達二人との共同作業で、かつてBC5〜3世紀ごろから日本海を自由に行き来して活躍していた海の安曇族と当時の百済高句麗新羅などとのつながりをテンポよく展開していく。

安曇野市にある観松院という寺にある「弥勒菩薩半跏思惟像」が第一の手がかりで、百済から日本に仏教伝来した時代にさかのぼり、日本と朝鮮半島との深いつながりや広隆寺弥勒菩薩など日本に伝わる仏像についてもなかなか興味ある内容になっている。

安曇-琵琶湖-太宰府-志賀島-対馬-釜山-白村江-ソウルなどを主人公は韓国友達と訪ねて回り、読んでいて読者も一緒に旅行してみたくなる思いにさせられる。

古代史ファンにはたまらなく楽しい本だと思った。

作者の一人松本猛氏は東京芸大美術学部芸術学科卒で世界初の絵本美術館であるちひろ美術館を設立した人である。