100冊の本に挑戦 土門拳 「古寺を訪ねて 1・斑鳩から奈良へ 2・奈良西の京から室生へ」

土門拳さんは私の大好きな写真家である。
独特のアップで被写体に迫り見る人に力強い感動を与えてくれる。この古寺を訪ねてシリーズは4巻まである写真集であり今回はそのうちの最初の2巻である。

作者は写真家であるが、写真とともに彼の文章もとても面白い。

法隆寺の項では、梅原猛氏の「隠された十字架 法隆寺論」でその不可解さを「死霊を封じ込めるため」と論じられたことに対し疑問を呈し、梅原氏とはまた違った角度で述べている。すなわち「ぼくはその意見を鵜呑みにはできない。今、ぼくはそれよりも造形的なエンタシスの柱のたくましさに、魂を奪われざるをえない」と。
写真家としてその建築物の造形美を見事に写し論じている。

写真ももちろん素晴らしく、法隆寺の尾垂木を支える邪鬼や東大寺戒壇堂の広目天像の面相など面白くもあり鳥肌がたつ写真も多い。

唐招提寺金堂にある有名な千手観音立像の脇手のアップ画もうなってしまう。この写真も入江泰吉氏に同様な写真があるが、同じようでやはりそれぞれの感覚が違うのがどちらもすごい。